遠い昔、夏休みに母の実家の隣村で催された田舎の花火大会。
どこまでも暗かった夜道と、心踊らされた光景が、私の花火の原風景です。
永らく、大型カメラで計算し尽くし風景等の撮影をしてきた自分にとって、撮影結果は予想でき、想定内でなければならないことであった。
20年程前、近所の花火大会に普段は使わない35ミリカメラと、期限切れ間近のフィルムを持って出かけ、動かせるところはすべて動かして気前よくシャッターを切った。
当然、わけの解らない原版の山ができた。が、数コマ「何これ」というカットを発見した。
しかし、ランダムにピントリングやら本体を動かしていたので、何をどうしたらこうなるのかという分析が必要となった。しかしそれを再現するにも、対象が花火だけにいつでもできるというわけにはいかない。
ここから私の花火行脚(迷走)が始まった。
(中略)
いくつものテーマをもって制作してきたが、人間に「火」を与えてくれたというプロメテウスの神話が常に脳裏の片隅にあり、その話に想いを巡らせながらの撮影の日々が続いている。
今回、写真集の出版にあたりどのテーマで纏めるか悩んだが、デザイナーの石山さんの提案もあり、原点であるプロメテウスへのオマージュとした。そのため数万点の中からギリシャ神話に沿ったかなりコンセプチュアルな作品選びとなっているが、神話の世界に浸り絵本感覚で心躍らせてご覧いただけたら本望です。
〜あとがきより〜